APIで繋がらないSaaSは淘汰される&21世紀枠に学ぶ応援されるビジネス|monotips station 第304回



イントロダクション

2026年3月、AIエージェントが業務を自動で回す時代が現実のものになりつつあります。スタッフ0人で60社の経理を処理する税理士の事例がXで大きな話題となり、SaaSの選び方そのものが変わろうとしています。

今回のmonotips stationでは、2つのテーマをお届けします。1つ目は、しばっちが語る「選抜高校野球の21世紀枠から考える、ビジネスで応援されるプロセスの価値」。母校・長崎西高校の75年ぶりの甲子園出場を通じて、中小企業が大企業に勝つためのストーリーの力を掘り下げます。2つ目は、あらかわが解説する「APIで繋がらないサービスはヤバいTIPS」。Claude Codeの実体験から、APIファーストの時代にSaaSがどう淘汰されていくかを語ります。

応援される力と、つながる力。一見対極に見える2つのテーマが、ビジネスの本質で交差する回です。


1. 選抜高校野球の21世紀枠から考える、ビジネスで応援されるプロセスの価値

1-1. 母校・長崎西高校の75年ぶり甲子園が教えてくれたこと

しばっちの母校・長崎西高校が21世紀枠で選抜高校野球に出場しました。75年ぶりの甲子園。アルプススタンドの応援席チケットは完売し、全国から卒業生が駆けつけました。25年ぶりに再会する同期や先輩もいたといいます。

注目すべきは、集まった人たちが「勝てるから」来たわけではないという点です。21世紀枠の時点で優勝候補ではないことは誰もが分かっている。それでも万難を排して甲子園に来た理由は何だったのか。しばっちはここにビジネスのヒントがあると考えました。

1-2. 制約を武器に変える中小企業の戦い方

21世紀枠の選考基準 — 実力だけじゃない「選ばれる理由」

21世紀枠は、離島にある、部員不足を乗り越えた、練習環境が限られているなど、困難を克服した学校に与えられる特別枠です。長崎西高校は進学校で1日7時間授業。放課後の練習時間は1時間半程度しか確保できません。強豪校が昼から野球漬けの生活を送る中、圧倒的に不利な条件です。

しかし長崎西はその制約の中で独自の工夫を重ねました。マネージャーが開発したアプリでデータを分析し、体重管理を徹底。限られた時間で効率的な練習を追求した結果、九州大会ベスト8まで勝ち上がったのです。

ランチェスター戦略に通じる「制約からの独自性」

これはビジネスにおけるランチェスター戦略と同じ構図だとしばっちは指摘します。人・モノ・金が足りない中小企業が「できない」と嘆くのではなく、できないなりに独自の工夫や専門性の高さを武器にする。大企業が来られない市場を攻める。練習時間のハンデを知的なアプローチで補った長崎西の戦い方は、まさに中小企業の生存戦略そのものです。

対戦相手との温度差が示す「希少性の力」

興味深いエピソードがあります。対戦相手の滋賀学園は甲子園常連校で、アルプススタンドにはまだ空席がありました。「出慣れている」から一回戦はまだいいか、という温度感。一方の長崎西は75年ぶりという希少性もあり、超満員。ビジネスでも「よくあるサービス」と「一生に一度の体験」では、人の動き方がまったく違います。

「勝つから応援するんじゃなくて、応援したくなるストーリーがあるから人が集まる」(しばっち)

しばっちはイベント企画の経験から、動員の難しさを痛感しています。その上で、全国から卒業生を集めた力の源泉は「勝敗」ではなく「ストーリー」にあったと分析します。限られた時間で頑張る後輩の姿、75年ぶりという一生に一度の機会、そこに人は動かされたのです。

1-3. あなたのビジネスの「21世紀枠」を見つける

ビジネスにおいて、他社にない制約は何か。それをどう独自の工夫に落とし込めるか。甲子園に出るといえば誰もが「おめでとう」と言ってくれるように、みんなが応援できる「舞台設計」も重要です。付加価値やストーリー、志のあるビジネスは強い。それが、あなたが選ばれる理由になるとしばっちは語ります。

1-4. まとめ:応援される力はビジネスの最強の武器

大企業に実力で勝てなくても、応援したくなるプロセスがあれば人は集まります。制約を嘆くのではなく、制約を個性に変える工夫こそが中小企業の生存戦略。あなたのビジネスの「21世紀枠」は何か、ぜひ考えてみてください。


2. APIで繋がらないサービスはヤバい — SaaS淘汰とAIファーストの時代

2-1. スタッフ0人の税理士がClaude Codeで60社を回す衝撃

きっかけは、Xで大きな反響を呼んだ税理士・畠山さんの投稿でした。顧問先60社を抱えながらスタッフは0人。仕訳はすべてClaude Codeが処理し、毎晩9時に自動実行。翌朝には全社分が完了しており、目視確認で済むというフローです。

あらかわ自身も3回前の放送でClaude Codeを紹介して以来、実際に業務で使い倒しています。このPodcastの書き起こしからWordPress投稿、SNS運用まで全自動化が進んでいるといいます。その実体験から見えてきたのが、APIを開いているかどうかでSaaSの命運が分かれるという現実でした。

2-2. 「閉じたSaaS」が死ぬ理由

freee vs マネーフォワード — API対応が乗り換えの決め手に

あらかわは長年マネーフォワードを使っていましたが、Claude Codeとの連携を試みて壁にぶつかりました。マネーフォワードのAPIは上位プラン(現在の約3倍のコスト)でないと使えない。一方、freeeはAPIをオープンに公開しており、外部ツールとの連携がスムーズにできます。

「7、8年使って引っ越しコストもあるのに、それでも変えようと思うくらいAPIの差はでかい」(あらかわ)

機能や価格が似通った2つのサービスで、API対応の差がユーザーの乗り換えを決定づける。これはSaaS業界全体に広がる構造変化の縮図です。

ユーザーが求めているのは「完結するSaaS」ではなく「つながるSaaS」

畠山さんのシステム構成は、freee、Gmail、Googleカレンダー、Notion、SlackがすべてAPIで連携しています。AIエージェントがその中心に座り、各サービスを操作する。この構図において、APIを開いていないサービスはAIエージェントから「見えない存在」になってしまいます。

ShopifyをECで推す理由もここにあるとあらかわは言います。ブログ投稿もメルマガ配信もAIに指示するだけで完結できる「開いたSaaS」だからこそ、ビジネスの中核に据えられるのです。

ワープロとパソコンほどの違い

あらかわの友人がClaude Codeを使い始めて言った言葉が印象的です。「これ、ワープロとパソコンぐらい違うね」。自然言語で指示すればスタッフにLINEで伝えるような感覚で業務が進む。今年の年末には、自分でパソコン画面を操作する頻度が極端に減っているかもしれないとあらかわは予測します。

2-3. 今日からできる3つのアクション

まず、今使っているサービスのAPI対応状況を確認しましょう。「サービス名 API 開発者」で検索すれば、ドキュメントの充実度がわかります。次に、畠山さんの記事(概要欄にリンクあり)を読んで、AIエージェントが業務を回す全体像をつかんでください。そして、ZapierやMakeなどの連携ツールで「つながる」感覚を体験してみること。小さな自動化から始めるだけでも、見える世界が変わります。

2-4. まとめ:SaaSは死なない、閉じたSaaSが死ぬ

SaaSの終焉が語られる時代ですが、あらかわの見立ては違います。死ぬのは「閉じたSaaS」であり、APIを開いてAIエージェントと連携できるサービスはむしろ広がっていく。サービス選定の判断基準が「使いやすさ」から「つながりやすさ」に変わる転換点に、私たちは立っています。


エピソードの総括

今回の学びとポイント

一見対極に見える2つのテーマですが、根底にあるのは「選ばれる理由をどう作るか」という共通のテーマです。21世紀枠のストーリーも、APIファーストのSaaSも、他者から「選ばれる条件」を満たしているかどうかが問われています。人に選ばれるビジネス、AIに選ばれるサービス。どちらも、自分を開いて外とつながる姿勢が鍵を握っています。

押さえておきたいポイント

  • 制約を個性に変える工夫が、中小企業の「21世紀枠」になる
  • 応援されるストーリーは、勝敗を超えて人を動かす力がある
  • APIを開いていないSaaSは、AIエージェント時代に淘汰される可能性が高い
  • サービス選定の基準が「使いやすさ」から「つながりやすさ」にシフトしている

あらかわ・しばっちからのメッセージ

自動化やDXはそれ自体がゴールではなく、あくまでツール。大事なのは、その先にある付加価値や、人が動く理由です。甲子園に全国から卒業生が集まったように、「いい言い訳」があれば人は動く。自分のビジネスにおけるストーリーと、つながる仕組み。この2つを意識するだけで、ビジネスの景色は変わるはずです。

次のステップ

まずは自分のビジネスの「制約」を書き出して、それを強みに変える方法を考えてみてください。そして、普段使っているSaaSのAPI対応状況をチェックしてみましょう。畠山さんの元ポストはぜひ一読をおすすめします。


monotips stationについて

monotips stationは、ビジネスの小ワザを紹介するWebマガジン「monotips」から生まれたPodcastです。編集長・あらかわと副編集長・しばっちが、毎週あなたのビジネスがちょっとよくなるチップスをお届けしています。

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ABOUTこの記事をかいた人

クラハイト合同会社CEO  中小、ベンチャー、ひとりメーカー向けTIPS情報メディア「monotips」の編集長。ものづくりメーカーの経験を活かした、ベンチャー、中小、個人メーカー、企業の業務改善コンサルティングを行なう。株式会社ロンド工房のクリエイティブ・ディレクターとして、皮革製品、文房具、雑貨の企画、製造、販売も行なっている。