中東・関税・円安の嵐に動じない事業柔軟化&ランチェスター戦略の実践|monotips station 第311回
イントロダクション
収録日2026年5月12日、放送日5月13日のmonotips station 第311回。雑談は最大12連休にもなったゴールデンウィーク明けのトピックから。しばっちは事務所と自宅が徒歩2分のため休日も気づけば出勤していた話、あらかわは「ポテトチップスの袋が二色刷りになるらしい」という中東情勢絡みの小ネタを紹介。前回ep309で紹介したボードゲーム「モダンアート」を子どもと遊んだら完敗した、という話も飛び出しました。
今回の2テーマはどちらも「小さな会社の生き残り方」を別角度から掘り下げます。あらかわパートは「影響の輪」という概念を軸に、中東情勢・米国関税・円安という外部環境の嵐に対して小規模事業者がとれる5つの手を解説。しばっちパートは「ランチェスター戦略」を自社(行政書士事務所)に落とし込む実践編として、弱者の局地戦・接近戦・一点集中を紹介します。
「外の嵐を認識してから、内側で動く」と「やらないことを決めて一点突破する」——この2テーマは実は一枚のコインの裏表です。
1. 「影響の輪」の外の嵐に動じない、小さな会社の事業柔軟化
1-1. 「影響の輪」とは何か
あらかわが今回の入口に選んだのは、スティーブン・コヴィーの「7つの習慣」に出てくる「関心の輪」と「影響の輪」という概念です。
「関心の輪」は、自分が気になること・心配していること全部。中東情勢、為替、関税、景気、競合他社の動き、SNSのトレンド——情報過多な今、関心の輪はどこまでも広がります。「影響の輪」は、そのうち自分が実際に動かせること。自社の価格設定、取引先との関係、商品ラインナップ、コスト構造、自分のスキルアップ——これは自分の行動で変えられます。
コヴィーの言葉を借りれば、「主体的な人は影響の輪にフォーカスする。反応的な人は関心の輪にエネルギーを使う」。
「忙しいとか疲れてるとか落ち着かないとかっていうのって、フォーカスしてる見てるところが違うんじゃないかなって思うんですよ」(あらかわ)
1-2. 今の「嵐」を整理する
あらかわが「影響の輪の外」として挙げたのは主に3つです。
① 中東情勢(原油高・資材不足)
2026年2月のイラン攻撃以来、ホルムズ海峡周辺の緊張が続きガソリン補助金なしでは200円超になっていた原油。ナフサ不足でインクが来ない、ユニットバスが来ないといった資材不足が建設業など現場を直撃しています。
② 米国関税
全世界への10%追加関税(150日間)、輸出業や輸入原材料を使う会社への直接的なコスト増が続いています。
③ 円安・物価高
IKEAやApple製品の値上がりに象徴されるように、「ドル建てでは変わっていないのに円換算で割高になる」現象が日常化しています。
「大体7〜10年スパンでっかい何かが起きてる。コロナが終わって6年後に今回中東情勢も起きてる。自分ではコントロールできない嵐って必ず来るな、ぐらいのメンタルでいるしかない」(あらかわ)
嵐を「変えようのない事実として認識したら次に進む」。ここがポイントです。
1-3. 影響の輪の内側でできる5つの手
手① コスト増を価格に転嫁する(値決め力を持つ)
「お客さんに申し訳なくて」「値上げしたら逃げられるかも」という心理は分かる。でもコストが上がっているのに価格が据え置きなら、自社の利益を削り続けているだけです。値上げは感情ではなく数字で話す——「原材料費が○%上がったため」と説明できる形にしておくだけで、交渉のハードルが大きく下がります。
「うちの商流の取引先は、もう値上げに慣れてる。また値上げねみたいな感じで、比較的言いやすくなってきた」(あらかわ)
手② 仕入れ・調達先を分散させる
単一の仕入れ先依存は、そこが止まったときのダメージが大きい。複数社と付き合うと管理の手間は増えるが、「選択肢を把握しておく」だけでも大きく違います。
「これからの時代は手間やコストを飲み込んで複数社とやりとりするのが必要になってくるんちゃうかな」(あらかわ)
手③ 固定費を変動費に変える
倉庫を外部倉庫サービスへ、正社員中心業務をパート・外注へ、ソフトウェアをサブスクで持つ——売上が落ちても損益分岐点が下がる体質を作ります。
あらかわ自身のリアル例として「Claude Codeで自前アプリを作ってSaaSを解約した」という話も。月額5,000円のSaaSをAPI連携で自作して代替したことで、固定費を一本削れたそうです。
手④ 収益源を複線化する(事業の多角化)
大企業的な「全然違う分野への参入」ではなく、小さな会社の多角化はもっとシンプルでいい。2つの型があります。
- 深耕型(同じ顧客に違う価値を届ける):制作会社がSNS運用も受ける、小売業がネット販売を始める、文具店がカフェを併設するなど
- 展開型(同じスキルで違う客に届ける):建設業向けのIT支援をやっていた会社が製造業向けにも横展開するなど
キーワードは「関連多角化」——今のスキル・人脈・ブランドを活かせる範囲で広げる。全然違う分野に飛び込むのは小さな会社にとってリスクが高いです。
手⑤ キャッシュバッファーを積む
外の嵐が来たとき、現金がないと選択肢がなくなります。仕入れ先を変えるにも、商品を変えるにも動くためにはお金が必要。
「ずっと無借金経営でやってはった仕入れ先さんが、コロナ融資を受けようとしたらすごい待たされた。キャッシュバッファーが足りなかったっていうことになるのかな」(あらかわ)
目安は月商の3ヶ月分、最低でも2ヶ月分。融資枠を確保しておくことも含めて「手元に選択肢を持つ」ことが大事です。
1-4. 今日から始める3ステップ
- 「影響の輪マップ」を書く — 今の悩みを紙に書き出し、内側(動かせること)と外側(動かせないこと)に分ける。外側への悩みが多い人は気づくだけでエネルギーの使い方が変わります
- 売上の依存度を調べる — 会計ソフトの売上分析画面で顧客別・商品別の比率を確認。1社・1商品で50%以上なら要注意
- 隣の需要を1つ探す — 今のお客さんが他に困っていることは何か。いきなり始めなくていい、妄想・想像でいい。「もしやるなら」を日々考えておくことが将来の複線化の種になります
2. 最近ランチェスター戦略を勉強している — 弱者の一点突破TIPS
2-1. ランチェスター戦略とは何か
しばっちのテーマは、定期的に勉強したくなる「ランチェスター戦略」。その本質を、あらかわが即座に「るろうに剣心の弥彦の話でしょ」と見抜きます。
「弥彦が路地に逃げ込んで、路地は1対1しかなれないから、自分の剣撃のスキルで勝てるって戦っていって勝つシーン——それです」(しばっち)
広いところで大勢を相手にすると負ける。だから「局地戦」に持ち込む。これがランチェスター戦略の核心です。
強い会社(強者)はその分野でナンバーワンの企業。そして中小・小規模事業者はほぼ100%「弱者」です。弱者が勝つための原則は——局地戦、接近戦、一騎打ち、一点集中。強者と正面から向き合うのをやめることから始まります。
2-2. 「やらないこと」を決める
弱者の戦法のポイントは「絞り込む」こと。大企業は豊富なリソースでラインナップを広げられるが、小規模事業者が同じことをすると一つひとつの品質が落ちます。
しばっちが自社(行政書士事務所)に落とし込んだ絞り方がこちらです。
「西宮の建設業者さんで、経営をきちんとしていきたいと思う人、さらに10人以下——そういうところが多分一番強いので、そこが成長していくためのサポートが一番生き生きと仕事ができる分野かな」(しばっち)
業種(建設業)×地域(西宮)×規模(10人以下)×意欲(経営をきちんとしたい)という4軸で絞り込む。そこ以外の案件が来たときは、同様に一点突破している同業他社に紹介し、逆に自分の得意案件も回してもらう循環を作ります。
2-3. 接近戦 — 泥臭いコミュニケーションが弱者の武器
ネット集客や効率化はお金がかかれば強者が有利。だからこそ弱者が力を入れるべきは「面倒で泥臭いコミュニケーション」だとしばっちは言います。
- 代表が顧客に直接会いに行く
- 季節のお手紙・ハガキを直筆で送る
これは顧客数が少ない(=人数が限られている)弱者だからこそできること。顧客が増えるほど大企業にはできなくなっていきます。
しばっちの今後の実践は「季節のハガキを直筆で送る」こと。デジタルに包まれた時代だからこそ、アナログの接触が刺さります。
2-4. あらかわ×しばっちの対話から見えること
あらかわは「私は広げすぎて混乱するタイプ」と自己分析。だからこそランチェスター戦略の「やらないことを決める」は刺さると言います。SNSについても「うちはTikTokはやらないって決めとく」というランチェスター化は、AIによる自動化が進んでSNSの発信力が相対化されつつある今、一層重要だと2人は同意しました。
「多角化って言っても管理できなくなるぐらいまでやってしまったらやっぱりダメ。多角化は大げさに考えなくていい——お客さんにクロスセルをするやり方って何だろうって考えると、結構大事かなと思う」(しばっち)
一点突破と多角化、矛盾するように見えて実は補完関係にあります。一点突破で「最強の土台」を作り、そこから関連多角化で横に広げる——これが小さな会社の現実的な道筋だというのが、今回の2テーマを貫くメッセージです。
エピソードの総括
今回の学びとポイント
押さえておきたいポイント
– 影響の輪の外(中東情勢・関税・円安)には振り回されない。認識したら「影響の輪の内側」に集中する
– 5つの打ち手:価格転嫁・調達分散・固定費の変動費化・収益の複線化・キャッシュバッファー。全部一気にやらなくていい、まず一つ
– ランチェスター戦略:弱者は強者と正面から戦わない。業種×地域×規模×意欲で絞り込み、1対1の局地戦に持ち込む
– 泥臭い接近戦:直接会いに行く、直筆のお手紙——これは顧客数が少ない弱者だからこそできる武器
– 一点突破×関連多角化:最強の土台を作ってから関連領域に横展開する。「やらないことを決める」ことが第一歩
あらかわ・しばっちからのメッセージ
外の嵐に振り回されてエネルギーを消耗するか、足元を固めてじっくり動くか——それを決めるのは外部環境ではなく自分のフォーカスの置き場所です。影響の輪の内側だけを見る習慣を持つだけで、忙しさや焦りの質が変わります。
ランチェスター戦略の「やらないことを決める」も同じ。何をやらないかを決めることで、やることへの集中度が格段に上がります。嵐の中でも、足元を固め続けた会社が最後に伸びます。
次のステップ
- 自分の悩みリストを「影響の輪の内側/外側」に分類してみる
- 会計ソフトで売上の顧客別・商品別依存度を確認する
- 「うちはやらないこと」を一つ決めてみる(SNS・客層・地域など)
- 既存顧客に「最近困っていること」を一つ聞いてみる
monotips stationについて
monotips station は、ビジネスの小ワザメディア「monotips」から生まれたPodcastです。編集長・あらかわと副編集長・しばっちが、毎週あなたのビジネスがちょっと良くなるTIPSを2テーマずつお届けします。
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