カタン大会に学ぶ信用とファンづくり&全部に本気を出さない事業の3階層|monotips station 第316回



イントロダクション

収録日2026年6月16日、放送予定日6月17日のmonotips station 第316回。近況トークでは、しばっちが完結した将棋マンガ「龍と苺」を一気読みして衝撃を受けた話、あらかわが8人で集まったボードゲーム会で「インサイダー」などを遊んで盛り上がった話からスタートしました。

今回のテーマは、しばっちパートが「カタン大会に参加して感じたことについて語るTIPS」。あらかわパートが「全部に本気を出さない – 事業を3階層に分けて自分のお金に集中するTIPS」です。

一見、ボードゲームと事業の優先順位づけは別の話に見えます。ただ、どちらにも共通しているのは「全部を取りにいかない」という割り切りです。目先の勝ちや目先の利益を追わずに、信用を積み、自分がコントロールできるところに力を集中する。今回はそんな2本立てでお届けします。


1. カタン大会から学ぶ、ファンづくりと「信用」の本質

1-1. 大会は「集金装置」ではなく「ファンづくりの場」だった

しばっちパートのテーマは、年に一度の真剣勝負として参加しているカタンの大会で気づいたことです。参加は今回で3回目になります。

まず驚いたのが、その価格設定でした。参加費はおよそ2,000円。300人近くが集まる大会で、会場は丸一日貸し切り。計算してみると、参加費収入は会場費でほぼ消えてしまう水準で、「これで儲けよう」というガツガツした空気が一切感じられなかったと言います。

物販の現場を知るあらかわも、「自分たちのイベントだと入場料だけで3,000円もらうこともある。2,000円で丸一日遊べるのは破格」と反応していました。

会場では帽子やプレイマットといったグッズも売られていましたが、数量はごくわずか。これも「大量に売って稼ぐ」というより、プレイヤー同士の一体感や「カタンが好きだ」という帰属意識を高めるためのものに見えた、というのがしばっちの見立てです。

1-2. 大会で儲けるのではなく、長く売れ続ける土壌をつくる

ではなぜ、儲からない大会をやるのか。

しばっちの解釈は、「大会単体で儲けるのではなく、カタンを好きになって続ける人を増やすことで、将来にわたってゲーム本体や拡張版が売れ続ける」というものでした。いわゆるLTV、顧客生涯価値の発想です。

ボードゲームは一度買えば長く使えるので、LTVを設計するのは簡単ではありません。それでも、ファンが布教してくれたり、長く遊んでくれたりすることで、ブランドそのものが定番として残っていく。

これを自分たちの仕事に置き換えると、初回の相談でいきなり高額な契約を取りにいくのではなく、まず自分の価値をしっかり提供してファンになってもらい、そこから長くお付き合いする。専門職にとっても、これはビジネスの王道だよね、という話になりました。

1-3. 望まれていないアドバイスは、ただの「老害」になる

プレイヤー側から学んだことも多かったといいます。

ひとつは、対局中に「そこには置かないほうがいい」と指摘してくるベテランの存在です。教える側は気持ちよくなっていても、教えられる側は、自分で考えて決断する楽しみや、失敗から学ぶ機会を奪われてしまう。

しかも、その指摘が本当に正しいかどうかも分かりません。上から目線で命令に近い口調で言われると、たとえ内容が正しくても「絶対にその通りにはやりたくない」と意固地になってしまう、とあらかわも共感していました。

ここから引き出される教訓は、専門家ほど「セオリー上はこれが正解です」と正論を振りかざしがちだ、ということです。望まれていないアドバイスは、相手に寄り添う姿勢がなければ届きません。

1-4. 「事実を都合よく曲げる人」は、二度と話を聞いてもらえない

カタンは交渉がカギを握るゲームです。

しばっちが指摘したのは、交渉時におおむね正しいことを言いながら、最後のところだけ自分に有利になるよう事実をそっと曲げる人がいる、ということです。

それを続けると、相手は直感的に「この人は自分の利益しか考えていない」と気づきます。一度そう思われると、その後どんなに真っ当な提案をしても「裏があるのでは」と疑われ、協力してもらえなくなる。

「この人の言葉なら信じられる、と思ってもらえる土台が大事」(しばっち)

だからこそ、相手と自分の双方にメリットがある提案を心がける。小手先のテクニックや自社に都合のいい話で丸め込もうとすると、長期的な信用を失う、という気づきでした。

なお、カタンはそもそも全員が勝てるわけではないゼロサムゲームです。ビジネスは関わる全員が勝者になれるプラスサムにできる、という違いも話題になりました。ボードゲームから何を学び、どう仕事に活かすかを考えると面白い、というのが今回のしばっちの締めです。


2. 全部に本気を出さない – 事業を3階層に分けて集中する

2-1. しんどさの正体は「コントロールできないもの」

あらかわパートのテーマは、複数の事業を抱える人が、すべてに同じ熱量を注いで潰れないための割り切りです。

タイトルは「全部に本気を出さない」ですが、これは手を抜けという意味ではありません。収録中にしばっちが指摘した通り、「全部には本気を出さない=本気を出す事業を絞って集中する」という意味です。どの案件もお客さんも大事ですが、全項目に全力投球をすると人は潰れてしまう、という前提から話は始まります。

あらかわが注目したのは、しんどさの正体は仕事の量そのものではなく、「自分でコントロールできないこと」にある、という点です。

相手の都合で急に話がひっくり返る、外の相場が動く、自分が悪くないのに責められた気がする。こうした自分の努力では動かせないものが視界に入ると、たいして手を動かしていなくても消耗します。

逆に、自分で仮説を立てて検証しながら動かせる事業は、赤字が続いていても、小さなトラブルがあっても、不思議とストレスになりにくい。以前この番組で扱った「影響の輪」の事業版だと言えます。

2-2. 不安はキャッシュとゲーム感覚でやわらげる

あらかわは、コントロールできない不安の多くはお金である程度やわらげられる、とも話します。手元にコントロールできるキャッシュを用意しておくだけで、選べる選択肢が増え、メンタルの安定度も変わってくる。

そのうえで、キャッシュを増やすこと自体を「ゲーム的な感覚」で楽しむのが続けるコツだと言います。追い詰められて稼ぐのではなく、スコアを伸ばす感覚で取り組む。

一方で、今ある事業すべてのクオリティを100%に上げようとするのは無理がある、とも。レーダーチャートの5項目を全部満点にはできないし、プロ野球で9人のレギュラーが一年間まったく欠けずに戦えないのと同じで、どこかにコントロールできない要素が必ず入ってきます。だからこそ、力を抜く場所をあらかじめ決めておくほうが楽になります。

2-3. 事業を「メイン・サブ・仲間のため」に分ける

あらかわの整理は、事業や活動を3つの階層に分けるというものです。

メインは、自分でコントロールできて、ちゃんとお金になる事業。自分の打ち手で動かせて、収益の柱になるもの。これがないとそもそも生きていけないので、いちばん良い時間と頭を使います。

サブは、まだ大きな柱ではないけれど、メンタルを削られずに続けられる事業。「あまり稼げなくてもいい」くらいの気持ちで、遊びとして楽しんで取り組む。メイン一本に頼り続けるのは年々難しくなるので、サブを複数持っておき、ダメなら畳めばいい、という構えです。

仲間のためは、利益が主目的ではない活動。お世話になった人や仲間とのつながりのためにやる仕事です。ここを「儲かっているか」の物差しで測ると罪悪感が出てしまうので、最初から「これは利益度外視」と割り切っておくと気持ちが楽になります。

番組では、収録中に「monotips stationはどの階層か」「物販はどうか」を二人で当てはめる場面もありました。たとえば自社ブランドの物販は、儲けのためと思うとしんどいけれど、これまで関わってきた人たちとのつながりのためと捉え直すと気持ちが落ち着く、という実感が語られました。

2-4. B2Cの怖さと、ライフワーク・ライスワークの分け方

後半では、B2C(消費者向け)の難しさにも話が及びました。

自分が作ったものをいきなり世に出して売れるかどうかには、独特の怖さがあります。B2B(企業間取引)は相手がいて成り立つぶん気が楽な面があり、安定して長く事業を続けている人は、何かしらの複数の収入源を持っていることが多い、という話も出ました。

メンタルを削られるくらいなら、しんどい仕事は「仲間のため」「ライフワーク」と割り切り、別に気楽なクライアントワーク(ライスワーク)を持っておく。この線引きが、長く続けるための落としどころになります。


エピソードの総括

今回の学びとポイント

2つのテーマに共通していたのは、「全部を取りにいかない」という割り切りでした。目先の勝ちや目先の利益を追うより、信用を積み、自分がコントロールできるところに力を集中する。ボードゲームも事業も、勝ち方の設計が問われます。

押さえておきたいポイント
– 大会で儲けるより、ファンを増やして長く売れ続ける土壌をつくる(LTVの発想)
– 望まれていないアドバイスは、正しくても届かない。相手の決断と学びの機会を奪わない
– 交渉は「何を言うか(正論)」より「誰が、どんなスタンスで言うか(信用)」で決まる
– 事業は「メイン・サブ・仲間のため」に分け、力の入れどころを先に決める
– コントロールできない不安には「これは輪の外」とラベルを貼り、キャッシュとリソースのバッファーを備える

あらかわ・しばっちからのメッセージ

ボードゲームの勝敗も、事業の優先順位も、結局は「どこで信用を積み、どこに力を集中するか」という設計の話です。全部に全力を出そうとして消耗する前に、力の配分を決めておく。それが長く続けるためのコツかもしれません。

次のステップ

  1. 今やっている事業・案件・活動を、紙かメモアプリに全部書き出す
  2. それぞれに「メイン」「サブ」「仲間のため」のラベルを付ける(分け方は自分用にアレンジ可)
  3. 階層ごとに、かける熱量をあらかじめ決める
  4. 提案や交渉の前に、「相手にもメリットがあるか」「事実を曲げていないか」を確認する
  5. コントロールできない不安は「輪の外」と切り分け、そのぶんの力をメインとサブに戻す

monotips stationについて

monotips station は、ビジネスの小ワザメディア「monotips」から生まれたPodcastです。編集長・あらかわと副編集長・しばっちが、毎週あなたのビジネスがちょっと良くなるTIPSを2テーマずつお届けします。

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ABOUTこの記事をかいた人

クラハイト合同会社CEO  中小、ベンチャー、ひとりメーカー向けTIPS情報メディア「monotips」の編集長。ものづくりメーカーの経験を活かした、ベンチャー、中小、個人メーカー、企業の業務改善コンサルティングを行なう。株式会社ロンド工房のクリエイティブ・ディレクターとして、皮革製品、文房具、雑貨の企画、製造、販売も行なっている。