「売りたい商品より聞かれた商品を見ろ」隙間需要は現場で見つかる & 士業SNSを自己レビューしてみた|monotips station 第313回



# 「売りたい商品より聞かれた商品を見ろ」隙間需要は現場で見つかる & 士業SNSを自己レビューしてみた|monotips station 第313回

イントロダクション

収録日2026年5月26日、放送日5月27日のmonotips station 第313回。雑談では、しばっちが最近はまっている漫画「ふつうの軽音部」の話から始まりました。我々の世代にドンピシャな楽曲が次々と登場するこの漫画、バンプ・オブ・チキンや銀杏BOYZなど懐かしいバンドが出てきて「登場曲一覧だけでも見てほしい」とのこと。あらかわは友人から熱烈に勧められて攻殻機動隊を見始め、「AI全盛期の今だからこそ刺さる内容」だと語っていました。

今回の2テーマは、どちらも「現場から気づきを引き出す」という共通点があります。あらかわパートは、問屋の展示会での体験から「聞かれた商品を見る重要性」と隙間需要の見つけ方。しばっちパートは、自分の事務所のインスタグラムを客観的にレビューし、士業がSNSを使う意味と戦略を語ります。


1. 聞かれた商品を見ろ——展示会で見つける隙間需要のTIPS

1-1. 売りたい商品と聞かれる商品は、たいていズレている

展示会に臨む前、あらかわは「今回はこれを見てほしい」と思う商品をある程度決めていきました。書籍周りの可愛らしい作家物の商品をメインに並べたのですが、実際にフタを開けてみると、全然違う商品に反応が集まったのです。

反応が強かったのは、渋い革製のノートカスタムパーツ——具体的にはノートの表紙部分だけを交換できる本革の製品です。フェイクレザーやビニール素材の製品は他にもたくさんありますが、本革でこの用途に特化した商品は珍しい。バイヤーから「これ、他にあまり見ないよね」という反応が返ってきました。

「こっちはこれを売りたかったのに、反応はあっちだった。でも結果オーライばかり。狙い通りの結果が出ないことが多くて、違うところで反応あったからいいかって。でもそれに固執しすぎてもよくない」(あらかわ)

この経験からあらかわが感じたのは、展示会は「自分の商品を説明する場」であると同時に、「どの商品に反応が返るかを観察する場」でもあるということです。

1-2. 「他に見ない」は、小さなメーカーの武器になる

小規模メーカーが商品を売るとき、大手メーカーのように「新しい市場を作る」や「広告を打って売り場を獲得する」という戦い方は現実的ではありません。あらかわが言うのは「隙間にシュッと入り込んでいくしかない」という発想です。

これは前回しばっちが話したランチェスター戦略とも直結します。「ノート市場でナンバーワンになる」ではなく、「すでに動いているマーケットに乗っかって、大手が手を出さない細かい土俵で戦う」という考え方です。

本革のノート表紙は、システム手帳ライクに表紙を交換したいというニーズを満たしつつ、本革ならではの素材感と経年変化を提供できる。フェイクレザーとは使う理由がそもそも違う。「他に見ない」が成立するのは、この「誰かのどんな不便を満たすか」が言語化できているからです。

興味深い事例として、Teriwが100〜200円が相場だった下敷きを2000円台で販売したところ、何万個もの販売実績を出しました。ところがそこにはすぐ類似品が参入してきた。しかしあらかわはこれを「マーケットリーダーになった証拠」とも読みます。類似品が出てくるほど魅力的な市場を作ったということであり、マーケットリーダーとして一緒に売り場を広げる立場を取ることもできます。

1-3. 値上げ局面ほど、「選ばれる理由」が問われる

材料費の上昇が続く中、小規模メーカーほど調達力がなく、値上げは避けられない現実があります。一方、あらかわが現場で感じているのは「バイヤーが値段値段と言わなくなってきた」という変化です。

「妥当な価格帯に収まっていれば、価値で動いてくれる感覚がある」——これは信頼関係があってこその話ですが、価格だけで選ばれようとする商品よりも、「誰のどんな場面のための商品か」が明確な商品のほうが、値上げ局面でも強い。広くぼんやり売ろうとすると逆に選ばれにくくなる、というのがあらかわの見立てです。

また「紹介の質」も重要で、しっかりとした文脈で紹介してもらえると価格の話が出にくくなる。HPやSNSで事前に価値観を伝えておく情報発信が、「値段だけで来ない客層」を育てることにつながります。

1-4. 今日から試せる3ステップ

ステップ①:推し商品と質問商品を分けて記録する

展示会・接客・商談のたびに、「自分が一番推した商品」と「相手が一番反応した商品」を別々にメモする。スマホに向かってバーっと喋るだけでもいい。AIも使えるようになった今、帰り道に音声でメモしておくだけで振り返りの材料になります。

ステップ②:「他にない」を困りごとの言葉に翻訳する

「珍しい商品」で終わらせず、「誰の、どんな不便を満たしているのか」まで言い換える。これができると商品説明も、提案書も、POP文章も変わってきます。

ステップ③:次の現場で一つだけ説明を変えて検証する

いきなり全部リニューアルするのではなく、「最初の一言だけ変えてみる」「サンプル使用例を一枚追加してみる」など、変数を一つに絞って次の現場に持ち込む。これを繰り返すことで、隙間需要の輪郭が少しずつくっきりしてきます。


2. インスタ自己レビューが最強のマーケティング分析——士業SNS活用TIPS

2-1. 士業がインスタを使うのはなぜ難しいのか

しばっちが取り上げたのは、自分の事務所「しばはら行政書士事務所」のインスタグラムを客観的にレビューするという試みです。リスナーには「スマホで『しばはら』とひらがなで検索しながら聞いてほしい」と案内しました。

士業のインスタが難しい理由として、しばっちは二点を挙げます。一つは「守秘義務があるため成果物(書類)を見せられない」こと。飲食店なら料理写真、美容室なら施術ビフォーアフターで直感的に価値を伝えられますが、行政書士の仕事は書類作成や許認可申請——「映えない」のです。もう一つは「抽象化・一般化をしすぎると誰にも刺さらなくなる」こと。専門知識を正確に伝えようとすると難しくなりすぎ、逆に日常系の投稿だと何の専門家か分からなくなってしまいます。

2-2. 事務員が書くから分かりやすい——しばはらインスタの設計

しばはら行政書士事務所のアカウントは、しばっちがネタを出して事務員さんが投稿を作るという分業で動いています。

「僕が作るとすごく難しくなってしまう。正確さを求めすぎるあまり、言い切れないんです。事務員の視点で書いてもらったほうが分かりやすい」(しばっち)

建設業に特化した専門知識を、事務員さんが分かるぐらいのレベルで説明する——この「知識量の非対称性」を逆手に取った設計です。難しい用語の解説、事務員目線で見た事務所の仕事の様子などを月4〜5投稿のペースで続けています。

あらかわが評価したのは「カルーセルで大きな文字を使っていること」「ハイライトにリンクを貼ってホームページへ誘導する動線を作っていること」の2点。「メニュー化がしっかりできている」というコメントでした。

2-3. 伸ばすことが目的ではなく、信頼を醸成する場所として使う

あらかわから「フォロワーを伸ばしたいのか?」と問われて、しばっちの答えは「別にそういうわけではない」でした。

目的は別にあります。交流会や商工会議所で名刺交換をした相手が「どんな人か調べてみよう」と思ったとき、インスタを見て「この人はこういうことを知っていて、こういう考え方で仕事してる」と分かる——その機能です。見込み客の事前フィルタリングとして動いてくれることが理想です。

あらかわはこれを「バズらせるつもりがないなら今の方向性は正解」と評価します。もしバズらせて営業ツールにしたいなら、建設業者ペルソナを作ってエンタメ寄りの設計が必要になってくる。目的が違えば戦略も変わる、ということです。

2-4. 自社SNSの振り返りが最強のマーケティング分析

今回のしばっちの提案は「自社のSNSやホームページを一番下までスクロールしてあーだこうだ言い合ってみる」というものです。初期の投稿、スランプ時期の投稿、最近の投稿——時系列で見ると、発信の迷いや変化がそのまま画面に出ています。

「恥ずかしいけれど、それが最強のマーケティング分析になる。ぜひ友人や仲間と一緒にやってみてほしい」(しばっち)

さらに「こういうオフ会みたいな場を作ってもいいんじゃないか」というアイデアも飛び出し、商工会議所などで「お互いのSNSをあーだこうだ言う会」を開いたら面白いのでは、という話で盛り上がりました。


エピソードの総括

今回の学びとポイント

押さえておきたいポイント

  • 売りたい商品と聞かれる商品は違う。展示会は説明の場であると同時に、反応を観察する場でもある
  • 「他に見ない」は小さなメーカーの武器。ただし「珍しい」だけでは弱い。誰のどんな不便を満たすかが言語化できてはじめて強くなる
  • 値上げ局面ほど「選ばれる理由」が問われる。広くぼんやり売ろうとすると逆に埋もれる
  • 士業のSNSは「信頼の醸成」が目的。フォロワー数より、見た人が「この人は信頼できる」と感じる設計が大事
  • 自社SNSの自己レビューは最強のマーケティング分析。一番下までスクロールして振り返ることが改善の起点になる

あらかわ・しばっちからのメッセージ

どんな商品もどんなサービスも「知ってもらうのが大変」という共通の課題があります。展示会での観察も、インスタグラムの継続も、地道な積み上げが現場の反応として返ってくる。その反応を一つずつ言語化して、次の一手に変えていく習慣こそが、小さなビジネスの実質的な強さになっていくのでしょう。

次のステップ

    1. 次の接客・展示会で「何を説明したか」より「何を聞かれたか」を一つだけ記録してみる
    2. 自社のSNSやホームページを一番下までスクロールして、「誰に向けて話しかけているか」を確かめる
    3. 仲間と集まって、お互いのSNSやHPを「あーだこうだ」言い合う場を作ってみる

monotips stationについて

monotips station は、ビジネスの小ワザメディア「monotips」から生まれたPodcastです。編集長・あらかわと副編集長・しばっちが、毎週あなたのビジネスがちょっと良くなるTIPSを2テーマずつお届けします。

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ABOUTこの記事をかいた人

クラハイト合同会社CEO  中小、ベンチャー、ひとりメーカー向けTIPS情報メディア「monotips」の編集長。ものづくりメーカーの経験を活かした、ベンチャー、中小、個人メーカー、企業の業務改善コンサルティングを行なう。株式会社ロンド工房のクリエイティブ・ディレクターとして、皮革製品、文房具、雑貨の企画、製造、販売も行なっている。