イントロダクション
2025年、人手不足が原因の倒産件数が過去最多を更新しました。そのうち6割以上が資本金1,000万円未満の零細・小規模事業者です。採用に時間もお金もかけられない——そんな事業者に向けて、今回は「チャットAIをAI社員として育てる」実践的な考え方を紹介します。
むずかしいツールを導入しなくても、普段使っているChatGPTやClaudeのチャット画面だけでできることが実はたくさんあります。さらに、しばっちからは行政書士として学生向け講義を担当して気づいた「教える側が一番学んでいる」という話題をお届けします。
1. 人が取れないならAIを雇う〜チャット1枚から始めるAI社員の作り方
1-1. 人手不足倒産が過去最大——私たち事業者が考えるべきこと
AI社員という発想が現実的な選択肢になってきました。2025年、人手不足を理由にした倒産が過去最多を記録。そのうち63%以上が資本金1,000万円未満の零細・小規模企業という統計が出ています(東京商工リサーチ調べ)。採用難は「大企業の問題」ではなく、小規模事業者こそ直面している課題です。
あらかわが手帳愛好家のオフ会(参加者50名超)で感じたのは、エージェント型AIを業務で使っている人がほぼゼロだったという現実でした。ChatGPTやClaudeを使っている人はいても、自律的にタスクをこなす「エージェント型」は誰も使っていない。それほどまだ情報格差が大きい。
だからこそ、まずは今持っているチャット画面の使い方を変えるだけでも、事業の回し方が変わります。
1-2. チャットAIを「AI社員」として使う3つのコツ
最初のプロンプトに役割を設定する
チャットAIは最初にどんな役割を与えるかで回答の質が大きく変わります。「あなたは経理担当の会計の専門家です」「優秀なファイナンシャルプランナーとして私のライフプランを作ってください」——このひと手間だけで、返ってくるアドバイスの精度が格段に上がります。
役割設定のテキストは、メモアプリやスキル(ChatGPTなら「GPTs」、Claudeなら「Projects」)に保存しておくと毎回コピペするだけで済みます。ジャンルごとに役割文を用意しておくのが実践的な一歩です。
仕事のジャンルが変わったらスレッドを切り替える
見積もりを作っていたチャットで急に「この文章どう思う?」と聞く——これが意外と品質を下げる原因になります。チャットAIはその会話の流れから文脈を読むため、複数の用途を混在させると回答が散漫になります。見積もり用、文章チェック用、議事録用と分けて使うのが鉄則です。
仕事の棚卸しを先にやる
AI社員を雇う前に、まず「何をやらせるか」を自分で整理する必要があります。棚卸しの軸は2つ。
① 繰り返し作業か、一回のみか
毎週・毎日やっている定型業務はAIに向いています。例えば毎週の収録音声を書き起こして記事化・SNS投稿まで流す作業は、フローさえ作れば繰り返し使い回せます。
② 言葉で説明できる仕事か、感覚や人間関係が必要な仕事か
「この仕入れ先との関係がないと動かない」「この雰囲気を読んで判断する」——そういった業務は今すぐAIに任せるのは難しい。でも「感覚が必要」と思っている仕事の多くは、突き詰めると言語化できるものが混ざっています。まずは言葉で説明してみる習慣が大事です。
「繰り返しかつ言葉で説明できる仕事は、AI社員に向いてる」(あらかわ)
1-3. AIが特に効く仕事と人間が握るべき仕事
AIが得意な業務の例:
- メールの下書き・返信文案
- 議事録の要約・整形
- 文章の校正・整え
- 調べ物のまとめ
- 壁打ち相手(アイデア出し・判断の確認)
- 見積もりの叩き台作成・価格相応性チェック
- 年に一度しか使わないウェブ手続きのガイド役(e-Tax、L-TaxなどをスクショしてAIに聞く)
人間が握るべき仕事:
値決め・価格交渉、誰と組むかの判断、責任が伴う対外交渉——これらは当面、人間の領域です。
スマホにジェミニやClaudeのアプリを入れ、困ったときにカメラで撮って「これどういう意味?」「この書類、どこに何を書けばいい?」と聞く習慣をつけるだけでも、日々の業務の「詰まり」が大幅に減ります。
1-4. まとめ:「あなた専用の秘書」は今日から育てられる
役割設定→仕事の棚卸し→スレッド管理という3ステップを実践するだけで、AI社員は少しずつ「育って」いきます。完全に人手不足が解消するわけではありませんが、「社員がいなくても事業が続く」という選択肢に確実に近づきます。
2. 教える側が一番教わっている〜学生向け講義をする3つのメリット
2-1. 行政書士がボランティアで学生に講義する理由
しばっちは行政書士として、大学生向けのボランティア講義を数年にわたって担当しています。直接の売上にはつながらないのに、なぜ続けるのか——その答えが「教える側が一番学ぶ」という実感にあります。
学生向けの講義は3時間の単発が基本で、許認可の仕組みや行政書士のビジネスについて話します。最初は学生も警戒気味で静かですが、ワークを取り入れると次第に盛り上がり、最後には積極的に質問が飛んでくる。「今の若者もちゃんと考えている」と毎回感じるそうです。
2-2. 学生向け講義が専門家を成長させる3つのメリット
メリット1:本質を理解していないと話せない
専門家は日常的に専門用語を使います。むしろ専門用語を使った方が「詳しく見える」という感覚もある。しかし学生相手には通じません。「許認可とは何か」「なぜ許認可が必要なのか」——当たり前に使っていた言葉を噛み砕く作業は、自分の理解の深さを測るリトマス紙になります。
アインシュタインの言葉として知られる「6歳の子供に説明できなければ、自分でも理解したことにはならない」はまさにこれを指しています。
これはボードゲームのルール説明(インスト)にも似た話です。マニュアルを読んでそのまま伝えるのではなく、理解したうえで再構築して相手に届ける——それができて初めて「わかっている」と言えます。
メリット2:純粋な疑問が固定観念をほぐす
業界に長くいると「そういうものだ」と素通りしてしまう慣例があります。ところが学生には前提知識がないため、「それってなぜやるんですか?」「何の意味があるんですか?」という本質的な疑問が飛んでくる。
大人同士だとなかなか聞きにくいことを、若さゆえの率直さで問いかけてもらえる。これが自分の凝り固まった価値観をほぐし、業界の慣例を見直すきっかけになります。
「純粋な疑問を知ることで、自分の中で凝り固まっているものが揉みほぐされる」(しばっち)
メリット3:未来のビジネスへの種まき
学生がすぐにお客さんになることはありません。でも今の学生が10年後、20年後に経営者になる可能性があります。またその学生の親が、しばっちの専門分野のお客さんになるかもしれない。
「どこで見られているかわからない」という意識で丁寧に話すことが、長期的な信頼の積み重ねになります。SNSで検索される時代だからこそ、その場で手を抜かない姿勢が大切です。
2-3. まとめ:人に教えることが自分を磨く
もしリスナーの皆さんにも学生や若い人への講義・発表の機会が来たら、ぜひ引き受けることをおすすめします。直接的な金銭的メリットはなくても、自分の専門性を再点検し、フレッシュな視点で見直す機会は、長い目で見ると大きな資産になります。
エピソードの総括
今回の学びとポイント
AIの話も学生講義の話も、根っこには「言葉で説明できるかどうか」という共通テーマがありました。繰り返し×言語化できる仕事はAI社員に向いている——この判断軸は事業のどの場面にも応用できます。
「AI失業を怖れるより、AI活用する側に回った方がいい」。難しいツールは要りません。スマホのカメラで書類を撮って質問するところから始めてみてください。
次のステップ
まずスマホにジェミニかClaudeのアプリを入れて、次の書類仕事のときに使ってみてください。AIを活用した自動化の詳細はPodcast「AIloglog」でも解説しています。
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