イントロダクション
2026年、原材料費・人件費・物流費の上昇が止まらないなかで、「値上げしたいけど言い出せない」と悩んでいる中小企業の経営者は多いのではないでしょうか。しかし今年1月から施行された取適法(旧下請法)により、状況は大きく変わりつつあります。
今回のmonotips stationでは、2つのテーマをお届けします。1つ目は、あらかわが解説する「4月から値上げの交渉を断れなくなった」法改正と価格転嫁の最新事情。2つ目は、しばっちが熱く語る「経営者がMG研修を絶対にやるべき理由」です。
どちらも経営の根幹に関わるテーマ。法律の追い風を活かした価格交渉の進め方と、ゲーム形式で経営センスを磨く方法を、実践的な視点でお伝えします。
1. 4月から値上げ交渉を断れない時代に — 取適法・価格転嫁・持続化補助金
1-1. 取適法の施行で「門前払い」が法律違反に
2026年1月から取適法(取引適正化法、旧下請法)が施行されました。これまで「値上げの話は聞きません」と門前払いされていた中小企業にとって、大きな転換点です。取引先が値上げ交渉そのものを拒否することが法律違反になったのです。
3月は「価格交渉促進月間」として国が推進しており、今まさに動き出すべきタイミング。あらかわは「国が交渉していいんですよって法律で言ってくれてる」と強調します。法律の後押しがあるうちに、しっかり準備して交渉に臨みましょう。
1-2. 価格転嫁の実態と取適法の3つのポイント
中小企業の価格転嫁はまだまだ不十分
東京商工リサーチの調査によると、価格転嫁できた中小企業は57.1%。しかし「十分に転嫁できた」と答えたのはわずか7.9%にとどまっています。特に小売業の転嫁率は36%と低く、多くの企業がコスト上昇を自社で吸収している状況です。
値上げの要因を見ると、原材料高が99.9%、人件費が66%、物流費が61.8%。ほぼすべての企業が原材料高に直面しており、「値上げしない」という選択肢はもはや経営を危うくする判断といえます。
取適法が変える3つのルール
取適法のポイントは3つあります。第一に、発注側が一方的に代金を決定することが禁止されました。第二に、手形払いが原則禁止となり、キャッシュフローの改善が期待されます。第三に、適用対象が拡大され、より多くの取引関係がカバーされるようになりました。
これらの変更により、下請け企業が適正な対価を受け取れる環境が法的に整備されつつあります。「言いにくい」「関係が悪くなるかも」という心理的なハードルはあるものの、法律が味方してくれている今がチャンスです。
4月からの制度変更を押さえておく
4月からは防衛特別法人税がスタートしますが、課税所得2,400万円以下の企業は実質ゼロ。多くの中小企業には直接的な影響は限定的です。一方、社会保険の適用拡大が進むため、人件費の上昇圧力はさらに強まります。
注目すべきは持続化補助金の第19回公募。締切は4月30日で、商工会議所への事前相談は4月16日までです。設備投資や販路開拓にかかるコストを補助金でカバーしつつ、適正な価格転嫁を進める。この両輪で経営を安定させる戦略が有効です。
「値上げはわがままじゃなくて経営を守る判断」(あらかわ)
この言葉の通り、値上げは自社の存続だけでなく、従業員の生活を守り、取引先との健全な関係を維持するための経営判断です。感情ではなく数字で語ることが、交渉を成功させるカギになります。
1-3. 今日から始める価格交渉の3ステップ
まずは原価上昇を数字で正確に把握しましょう。「なんとなく高くなった」ではなく、何がいくら上がったのかを具体的に整理します。次に、その数字をもとに取引先に価格の相談を持ちかけます。「値上げ」ではなく「価格の見直し相談」という切り口が効果的です。そして、持続化補助金の活用を検討してください。商工会議所に相談すれば、申請のサポートも受けられます。
1-4. まとめ:法律の追い風を活かして動く
「国が交渉していいんですよって法律で言ってくれてる」(あらかわ)
取適法の施行により、値上げ交渉の門前払いは過去のものになりました。3月の価格交渉促進月間を活かし、数字に基づいた冷静な交渉を始めましょう。持続化補助金や各種支援制度も組み合わせれば、経営基盤をより強固にできます。
2. 経営者がMG研修を絶対にやるべき理由 — 50年続くビジネスシミュレーション
2-1. ソニー発、孫正義も熱中した伝説の経営ゲーム
MG研修(マネジメントゲーム)は1976年にソニーで開発された、経営を体で学ぶビジネスシミュレーションです。開発者は西順一郎先生。今年で50周年を迎えるこの研修に、かのソフトバンク・孫正義氏も熱中したという伝説があります。
しばっちはこのMG研修を長年続けており、なんと200期を達成。「経営者なら絶対にやるべき」と断言するその理由を、実体験をもとに語ってくれました。
2-2. MGで学べる経営の本質
全員が社長になる — 仕入れから決算までを体験
MG研修では参加者全員が会社の社長になります。材料を仕入れ、人を雇い、製造し、販売する。そして最も重要なのが、自分の手で決算書を作成すること。手書きで損益計算書を作る過程で、数字の意味が体に染み込んでいきます。
普段は経理に任せている決算書も、自分で書いてみると「この数字はこういう意味だったのか」と腹落ちする瞬間があります。経営者にとって、数字を肌感覚で理解できるようになることは何よりの武器です。
安売りの恐怖を身をもって知る
MGで多くの参加者が陥るのが「安売りして忙しいのに儲からない」状態。しばっちはこれを「閉じまらしモード」と表現します。受注は多い、現場はフル稼働、でも利益が出ない。ゲームの中でこの恐怖を体験すると、現実のビジネスで安易な値下げに走らなくなります。
「安売りして忙しくて生き残れないのは経営者のせい」(しばっち)
この言葉は厳しいようですが、MGを体験すれば全員が納得する真実です。価格設定は経営者の最も重要な意思決定の一つ。それをゲームの中で安全に学べることが、MG最大の価値です。
プレッシャーの中で自分の癖が見える
ゲームとはいえ、競争相手がいる中での意思決定にはプレッシャーがかかります。焦って安売りする人、慎重すぎて機会を逃す人、一発逆転を狙う人。自分の性格や判断の癖がはっきり表れます。安全な場所で盛大に失敗できるからこそ、自分のパターンに気づき、現実のビジネスで修正できるのです。
2-3. MG研修の隠れた価値 — 共通言語と仲間
MGにはP(Price)、V(Variable Cost)、Q(Quantity)、F(Fixed Cost)、MQ(Marginal Quantity)といった独自の用語体系があります。この共通言語を持つことで、社員や他業種の経営者と経営の話が格段にしやすくなります。「MQが足りない」と言えば、説明不要で状況が伝わる。この効率は実務でも大きな力になります。
しばっちは200期を重ねる中で、「体験報告が一番の学びだった」と振り返ります。他の参加者の失敗や成功から学べることは、自分一人の経験をはるかに超えます。費用は2日間で3〜4万円程度。来ている人の価値観が近いため、ビジネスの仲間づくりにもつながります。
「MGに来てる人はいい会社か、いい会社になりたい会社かのどちらか」(しばっち)
2-4. まとめ:経営を「体で覚える」唯一の方法
MG研修は、座学では得られない経営の実感を与えてくれます。決算書を自分で書く経験、安売りの恐怖、プレッシャー下での判断力。50年間支持され続けている理由は、これらを安全な環境で体験できる点にあります。経営者はもちろん、これから起業を考えている人にもおすすめです。
エピソードの総括
今回の学びとポイント
2つのテーマに共通するのは「適正な価格と経営判断」。取適法による値上げ交渉の後押しも、MGで学ぶ価格設定の重要性も、根底にあるのは「安売りではなく、適正な対価を得ることが健全な経営の基盤」という考え方です。
押さえておきたいポイント
- 取適法の施行で値上げ交渉の門前払いは法律違反に。3月は価格交渉促進月間
- 価格転嫁できた中小企業は57.1%だが、十分に転嫁できたのはわずか7.9%
- MG研修は決算書の手書き作成を通じて、数字の意味を体で理解できる
- 安売りの恐怖をゲームで体感することで、現実の価格設定に自信が持てる
あらかわ・しばっちからのメッセージ
値上げは「わがまま」ではなく「経営を守る判断」。そしてその判断力を磨くのがMG研修のような実践的な学びです。法律が後押ししてくれている今だからこそ、原価を見直し、交渉の準備を始めましょう。経営を数字で語れるようになれば、取引先との関係もより対等で健全なものになるはずです。
次のステップ
まずは自社の原価上昇を数字で整理してみてください。そして持続化補助金第19回の締切(4月30日)に間に合うよう、商工会議所への相談を始めましょう。MG研修に興味が湧いた方は、まず1回参加してみること。2日間の体験が、経営の見え方を変えてくれます。
monotips stationについて
monotips stationは、ビジネスの小ワザを紹介するWebマガジン「monotips」から生まれたPodcastです。編集長・あらかわと副編集長・しばっちが、毎週あなたのビジネスがちょっとよくなるチップスをお届けしています。
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