イントロダクション
収録日2026年6月9日、放送予定日6月10日のmonotips station 第315回。近況トークでは、しばっちがカタン大会に出場する話、あらかわが東京出張後にサウナとぬる湯で回復した話からスタートしました。
今回のテーマは、あらかわパートが「WWDC26から考える、AppleがAIを空気にしたいTIPS」。しばっちパートが「総会シーズン終盤だから、各団体の総会に参加して気づいたことをシェアするTIPS」です。
一見すると、Apple Intelligenceと総会は離れたテーマに見えます。ただ、どちらにも共通しているのは「仕組みをどう設計し、人間がどこで判断するか」です。AI活用も組織運営も、便利さや形式だけではなく、最後に人がどこで責任を持つのかを考える必要があります。
1. Apple Intelligenceから考える、AI活用のゲート設計
1-1. AppleはAIを「空気」にしたい
WWDC26でAppleが示した方向性は、単に「賢いAIを出します」という話ではありませんでした。Apple公式のDeveloper情報でも、Apple IntelligenceはiPhone、iPad、Mac、Apple Watch、Apple Vision Proにまたがって、個人の文脈理解、アプリ操作、画面上の認識をつなぐ仕組みとして説明されています。
あらかわが注目したのは、AppleがAIを単体のアプリとして売るよりも、iPhoneやMacを使っているうちに自然とAIが動く体験を作ろうとしている点です。
Appleらしさは、最先端技術をむき出しで見せることより、すでにある技術を「使いやすい体験」として包み直すところにあります。Apple Watchも、通知・決済・健康管理という個別機能を、ひとつの生活体験にまとめてきました。Apple Intelligenceも同じように、AIを日常の操作の中へ溶かそうとしているように見えます。
1-2. でもSiriには信頼残高が足りない
一方で、あらかわは「たぶんこけると思う」とも話していました。理由のひとつは、Siriに対する過去の印象です。
これまでのSiriは、タイマーをかける、音楽を流す、簡単な質問をする、という程度なら便利でした。ただ、仕事の相談相手としては頼りない。明日の商談をどう進めるか、申請書類の次の一手をどうするか、といった判断を任せたい存在ではありませんでした。
AIを空気のように使える未来は魅力的です。しかし、スマホがいま何を読んでいるのか、どこまで個人情報を見ているのかが分かりにくいと、便利さより気持ち悪さが勝つこともあります。Appleがプライバシーを重視しているとしても、ユーザー側の体感として「安心して任せられるか」は別問題です。
「知識そのものより、今この人が何をしようとしているかを分かっていることが大事」(あらかわ)
Siri AIやApp Intentsの方向性は、まさにここを狙っています。アプリの内容や操作を自然言語で扱えるようにし、ユーザーが画面上で見ているものや文脈に沿って動く。Apple Developerの説明でも、App IntentsはSiri AIやApple Intelligenceとアプリを接続し、自然言語でアプリの機能を使えるようにする枠組みとされています。
ただし、これが実務で本当に気持ちよく動くかは、まだ別の話です。
1-3. 小さな会社は「人間がゲートに立つ」設計で使う
今回の実務的なポイントは、AppleのAIが成功するかどうかより、小さな会社がAIをどう使うかです。
あらかわは、AIを「よくできた道具」「よくできた外注パートナー」ぐらいに捉えると納得感があると話しました。AIに全部を委ねるのではなく、下書き、整理、細分化、候補出しを任せる。そして、送る・公開する・登録する・お金が動く、というところでは人間がゲートに立つ。
これはメール返信でも、見積もりでも、議事録でも同じです。
まず、仕事の入り口をひとつ選ぶ。たとえばメール、議事録、タスク管理、SNS投稿などです。次に、その仕事がどんな手順で動いているのかを言葉にする。「メールを読む」「返信が必要か判断する」「必要なら下書きを作る」「送信前に人間が確認する」。ここまで分解できると、AIに頼みやすくなります。
最後に、どこで止めるかを決めます。AIが下書きを作っても、送信は人間。AIが仕訳候補を出しても、登録前に人間。AIがSNS文を作っても、公開前に人間。このゲート設計がないまま自動化すると、便利さより事故のほうが先に来ます。
1-4. AI時代に残るのは「設計図を描ける人」
あらかわは、これからの仕事では「誰かが決めたことをやるのが得意」だけでは厳しくなるかもしれない、と話しました。逆に、目的を考え、手順を分解し、ゴールまでの設計図を描ける人の価値は上がります。
AIを使う力は、単にプロンプトを書く力ではありません。仕事の入口、操作、確認点を決める力です。
AppleがAIを空気にしたいとしても、小さな会社がそのまま全自動の夢に乗る必要はありません。まずは自分の仕事の中で、AIに任せるところ、人間が見るところ、絶対に止めるところを分ける。これが、現場で使えるAI活用の第一歩です。
2. 総会に参加すると、組織の意思決定が見えてくる
2-1. 総会は面倒だけど、情報の密度が高い
しばっちパートのテーマは、総会シーズン終盤の気づきでした。行政書士会など、いくつもの団体に所属していると、6月は総会が続きます。
総会と聞くと、議題を読み上げて、予算や決算を承認して終わるだけの場に見えるかもしれません。いわゆるシャンシャン総会なら、質疑応答もなく、淡々と終わります。忙しい人にとっては、委任状を出して終わりにしたくなるのも自然です。
ただ、しばっちは総会に実際に出ることで、その団体がどこにお金をかけ、何を諦め、何を次にやろうとしているのかが見えると言います。
2-2. 予算と決算を見ると、団体の方向性が分かる
総会では、決算や予算が報告されます。ここには、組織の意思決定がかなりはっきり出ます。
たとえば、前期に予算を立てていたのに使われていない項目がある。なぜ使われなかったのかを聞くと、選挙があって前半に動けなかった、検討したけれど適切なシステムがなかった、という事情が見えてくることがあります。
これは単なる会計の話ではありません。その団体がどんな課題を持ち、どんな行動を起こそうとして、どこで止まったのかを知る手がかりです。
あらかわも、シャンシャン総会は「問題が少ない」「根回しができている」「興味を持たれていない」のどれかかもしれない、と返していました。質問が多い総会も、議論が活発という意味では良い面がありますが、質問の質によって場の空気は大きく変わります。そこには議長の技量も出ます。
2-3. 中心人物に会えることが、地道な営業になる
しばっちがもうひとつ大きな価値として挙げたのは、人に会えることです。
総会には、団体の中心で動いている人が集まります。総会の前後や懇親会では、その人たちと雑談できることがあります。何を考えているのか、どんな課題に向き合っているのか、どんな人に仕事を振りたいのか。こうした話は、資料だけでは分かりません。
特に同業者の集まりでは、同じ志や近い業務観を持つ人を見つけやすくなります。仕事を直接取りに行くというより、「この人は信頼できる」「この人とは考え方が近い」という関係が少しずつできる。これは地味ですが、長く効く営業です。
「中心として動いている人たちの人となりが知れるのが大きい」(しばっち)
2-4. 総会は民主主義の防波堤でもある
番組の終盤では、総会という仕組みそのものの話にも広がりました。
人が集まって、報告を聞き、質問し、合意を確認する。面倒ではありますが、こうした場があるからこそ、組織は一部の人だけで勝手に動きにくくなります。民主主義的な組織運営には、こうした手間が必要です。
もちろん、すべての総会に出る必要はありません。ただ、自分が所属している団体や、関わりの深い業界団体の総会に一度出てみると、その組織の設計図が見えることがあります。予算、質問、中心人物、懇親会の空気。そこに、次の仕事や学びのヒントが隠れています。
エピソードの総括
今回の学びとポイント
今回の2テーマに共通していたのは、仕組みをただ受け身で使わないことです。AIも総会も、存在しているだけでは価値になりません。どこで判断し、どこで止め、誰とつながるのかを考えて使うことで、はじめて仕事に効いてきます。
押さえておきたいポイント
– Apple Intelligenceは、AIをアプリではなく日常操作に溶かす方向へ進んでいる
– Siri AIやApp Intentsは、アプリ操作や文脈理解を自然言語で扱うための重要な仕組み
– 小さな会社のAI活用では、AIに任せる部分と人間が止める部分を分ける「ゲート設計」が必要
– 総会は、予算・決算・質問・人の動きから、組織の意思決定を知る場になる
– 中心人物と会って話すことは、地道だが長く効く情報収集と営業になる
あらかわ・しばっちからのメッセージ
AIが進化しても、総会という昔ながらの仕組みが残っていても、大事なのは人間がどう使うかです。すべてを任せるのではなく、仕組みの意味を理解し、自分が判断する場所を持つ。
AI時代の仕事も、団体や組織との付き合い方も、結局は設計図を見る力に近いのかもしれません。
次のステップ
- 自分の仕事の中で、AIに任せたい「入り口」を1つ選ぶ
- その仕事の手順を、言葉で5ステップ以内に分解する
- 送信・公開・登録・支払いなど、人間が必ず確認するゲートを決める
- 所属している団体の総会資料で、予算と決算を一度見比べる
- 総会や懇親会で、中心人物に「今どんな課題がありますか」と聞いてみる
monotips stationについて
monotips station は、ビジネスの小ワザメディア「monotips」から生まれたPodcastです。編集長・あらかわと副編集長・しばっちが、毎週あなたのビジネスがちょっと良くなるTIPSを2テーマずつお届けします。
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